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栗坂某の黒歴史

クリサッカーワールドカップ開幕!

2016年4月1日

人々は問う。なぜ、そんなところでサッカーをするのかと。彼らは答える。そこに坂があるからだ―――

全世界2億5000万人の競技人口からなるサッカー界に新たな地平を切り開く「第一回クリサッカーワールドカップ」が本日いよいよ開幕する。

クリサッカーワールドカップのロゴマーク

近代のサッカーが確立する過程において、イングランドの良家の子弟のための全寮制学校であるパブリックスクールでレクリエーションとして受け入れられたことが一つの転機となった。奇しくもその流れを汲むクリサッカーもまた、競走馬をトレーニングするための内厩制調教施設である栗東トレーニングセンターで働く人々のレクリエーションとして産声を上げた。

基本的なルールはサッカーに準ずる。大きな違いを挙げるならばフィールドが傾斜している、つまりは坂路であることだ。球技においてフィールドが水平面であることはさも当然のようであるが、それを根底から覆す大胆な設定こそが本競技の特色。風上風下を気にしても、坂上坂下を気にする球技は古今東西存在しないだろう。球が転がり、選手も転がる。常識は、敵だ。

記念すべき第一回大会は今もなおミホノブルボンの魂が息づく聖地栗東坂路で開催される。言わずもがな我が国が誇る坂路の雄であり、幅員7メートルはサッカーのゴールとジャストサイズ。フィールドの長辺を200m=1ハロンとすることでICタグを利用した調教タイム自動計測システムによるゴール判定を可能とし、松木安太郎がどれだけ騒ごうともジャッジは正確無比。クッションの効いたウッドピッチはハーフタイムにハロー車による整備が行われる。グループリーグから決勝戦に至るまで公平なコンディションを維持し、芝が傷んでPK戦の最中にエンドが変わるようなこともない。

地の利を得る我らが日本代表は坂路調教のG1馬スリープレスナイトの一口馬主でもあったガンバ大阪の司令塔遠藤保仁を中心に、クリサッカーを熟知する地元トレセンのバンバ栗東から野性味溢れるゴールキーパー古川吉洋、社台ファームで実習経験のあるJ3奈良クラブの岡山一成など盤石の布陣。チームを率いるのはもちろん柴田善臣監督だ。オフサイドトラップを活用する戦術はトルシエジャパンのフラットスリーを彷彿とさせる。アジア最終予選でもその采配は冴え渡り、「笑いが止まらない」との名言を残したのは記憶に新しいところ。

その日本代表は開幕ゲームでオーウェン、ルーニーの競馬好きツートップを擁し優勝候補筆頭の呼び声が高いイングランド代表と激突する。名馬ロックオブジブラルタルの所有権を巡って揉めに揉めた名将ファーガソン監督は「プレミアリーグでは幾度となく優勝を果たした。しかし、残りの人生で欲しいタイトルが三つある。ダービー、グランドナショナル、そしてクリサッカーワールドカップだ。」と顔を紅潮させて意気込みを語った。

豪華すぎるメンバーだけあって坂路小屋のチケットは即完売。ほぼすべてを小屋常連の調教師陣が押さえており、音無秀孝調教師は「スリープレスナイトは橋口先生の管理馬だった。たまにはプロ野球のジャイアンツ以外も観てもらいたいね」と引退した橋口師を招待する意向を示す。試合そっちのけで坂路小屋漫才に花が咲きそうだ。

また、次回開催の招致合戦も既に熱を帯びている。第二回は「屋内坂路」で行われることになっており、国内ではビッグレッドファーム明和、真歌トレーニングパーク、コスモビューファームの日高3場開催で売り込む銀河系ラッパ吹き岡田繁幸氏と、ノーザンファーム、ノーザンファーム空港の2場に加えホースパークと交通の便の良さをパッケージにしてアピールするサッカーボーイはわしが守った吉田勝己氏両陣営の一騎打ちの様相。しかし、関係筋によれば岡田氏と旧知の仲で勝己氏の兄でもある吉田照哉氏が「そろそろうちも……」と参戦に意欲を示しているようで、競馬界の未解決問題のひとつ「社台ファームの坂路に屋根がない問題」がクリサッカーによって歴史的解決へと向かうかもしれない。